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C-1 星川精豪氏

更新日:2018年5月16日

文=林遼(ERUTLUC指導員)

「身長伸ばしたい人?」と星川氏が選手に問いかける、当たり前のようにすべての選手が手を挙げる。

 3.05mという高所にリングがある以上、大きい方が有利なバスケットという競技において、身長とはほとんどすべての選手が伸ばしたいと思っているのではなかろうか。大きくて上手い選手、大きくて動ける選手になるためにはどうしたらいいか。


 私自身もこのセッションにはかなり興味があった。

 どうしたら身長が伸びるのか…と考えながら日々を過ごしている選手は少なくないだろう。しかし、そこで星川氏の口から出た言葉は逆側からのアプローチだった。


「なにをすると身長が伸びなくなるか、それを知ることが重要です」


 大半の選手の考え方の逆をいくこの言葉から始まった星川氏のセッションの内容を、本レポートにて少しずつ紐解いていく。


 星川氏の経歴を簡単に紹介させて頂くと

山形県出身、日本工学院医療学部から早稲田大学大学院スポーツ科を卒業後トレーナーとして活動開始、現在は以下のように多岐にわたり活動されている。


 ・日本オリンピック委員会(JOC)強化スタッフ(医・科学スタッフ)

 ・男子バスケットボール日本代表サポートトレーナー

 ・早稲田大学ラグビー蹴球部アスレティックトレーナー

 ・江戸川大学男子バスケットボール部アスレティックトレーナー

 ・実践学園中学校男子バスケットボール部トレーナー

 ・早稲田大学スポーツ科学部外部講師


 この経歴のなかにある実践学園中学バスケットボール部(以下、実践中と記載)は関東はもちろん全国レベルの強豪校で、先のジュニアオールスターでも実践中の選手の活躍は素晴らしいものだった。その実践中の選手だが、なんと東京都の中学生の平均身長伸び率よりも部内平均身長伸び率が約3cmも高いという。平均して3cmとはかなりの数字ではなかろう。


 星川氏の言う「なにをすると伸びなくなるか」とはどういうことだろうか。



 身長の伸びを阻害しないためには、重要なポイントは3つあるという。

  1. 筋肉を柔らかくする。

  2. 成長ホルモンいっぱい出す。

  3. 膝の痛みを我慢しない。

 以上の内容であるが、その詳細をみていこう。


 身長は骨が成長することで伸びる。しかし筋肉が硬いと骨が伸びるのに対し抵抗力が発揮されてしまうという。だからストレッチなどで筋肉をほぐすのだが、ここで星川氏から「場合によってはストレッチが身長の伸びを阻害する可能性がある」と驚きの言葉が出る。


 どういうことか、曰く痛みを伴うような過度なストレッチを行うと痛みを抑えようと分泌されるホルモンが骨の成長を止める可能性があるという。そのため、ストレッチだけでなくマッサージでほぐす事が重要だという。


 成長ホルモンは睡眠時やトレーニング時に分泌される。

 日々の練習はもちろん、アンダーカテゴリーにおいてもそのカテゴリーに適した内容でトレーニングを行うことが重要であり、またトレーニング状況に応じて十分な睡眠をとることが大切である。また、過度なトレーニングや不十分な睡眠は身長の伸びを阻害する可能性があるという。

 膝の痛みは多くの選手が抱える問題だろう。成長痛やオスグットと診断されている選手が私の周りにもいる。この膝の痛みに耐えながらプレーすることで身長の伸びが止まる事があるという。筋肉の柔らかさの所でも出たが、人の身体は日常的に感じている痛みに対してそれを抑えるホルモンを分泌する、そのホルモンの中に骨の成長を抑えようとするものがあるという。


 だから、痛みに耐えてプレーするより時には痛みを伴わないトレーニングや、また日常的な身体のケアが必要になる。以上のようなことが身長の伸びを阻害しない為に重要である。その上で痛みが無い状態でバスケットをすることを選手も指導者も考えて欲しい。



 ここまで身長の伸びを阻害しない事を中心にしたが、本セッションのメインテーマは『身長が伸びているときに大切な事』である。


 ここからその内容に入っていく。日本人は身長が伸びる時に膝から下が先に伸びるという。下腿から上腿、前腕から上腕の順で伸びる。

 これがバスケットにおけるパワーポジションに重要な影響を与える。パワーポジションで構える時につま先よりも膝が前に出ないようにと言われることがあるが、成長期の選手に関しては下肢の中でも下腿の方が長いため膝を前に出さないようにすると背中が丸まってしまうことがある、そうすると体幹部分が潰れてしまうため本来の力が発揮されなくなってしまう。

 星川氏が言うには、横から見たときに下腿と背中が平行になっているかをみるという。

成長段階上、膝が出てしまうことは仕方がないことである。また膝が出ることで靭帯への影響を懸念されると思うが、これは股関節が十分に曲がり大腿四頭筋の緊張がやわらぐことで防げるという。

 足首が固いと怪我をすることが多い(捻挫はもちろん膝への負担も大きくなる)。そのため足首もきちんとストレッチしてあげる必要があるそうだ。



 また選手に身体の使い方やトレーニングの重要性も伝える星川氏。

 人の身体は斜めの方向に対して強い力を発揮すると言う。例えばドライブの時に右側でDefと接触するとき体幹部を通して左側の臀部や脚部の力を伝えられないと接触に耐えられない。そういった説明をしながらトレーニングを選手に紹介していくと、選手も身体の使い方や力の入れ方を掴んでいく。


 成長中の選手にはシュートが入らない時期や、ぶつかって負けてしまうこともでてくるという。しかし、それは成長に伴いどうしても起こってしまうことなので、そこで接触を嫌がらないようにしてほしいとの事。


 星川氏の話を聴きその本質的な重要性に気付いた選手たち、説明を聞くそのまなざしは真剣そのものである。この時間が選手に与えた影響は非常に大きいと感じた。


 人の身体にはそれぞれ成長の段階がある。

 星川氏曰く同学年の中でも±3歳の差があるという、つまり中一の中にも小学4年生程度の子もいれば高校1年生並の子もいることになる。また日本人とアメリカ人では成長の仕方も全然違う。その為、その子の成長段階に適したトレーニングが非常に重要になってくる。


 今回のセッションから成長段階における選手の現状を把握する事の重要性、またその子に適したトレーニングとケアを行う事が必要だと改めて痛感させられた。身体という分野は非常に奥が深くまだまだ私自身も学びが足りない分野である。

 少しずつではあるが、今回の内容を紹介していくことでより良い選手の育成につなげていければと考える。


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トレーナー活動をしているうえでの理念を教えて頂けますか? ---------------------------------

 怪我や痛みでプレーできない選手の力になりたいというのが大きいです。アンダーカテゴリーから代表選手まで様々なカテゴリーを見てきましたが、どのカテゴリーにも痛みや怪我に苦しむ選手がいる。少しでもそれを無くしたいと思っています。怪我の予防や痛みへの対処はどのカテゴリーにも必要で、且つこちらが一貫して伝えていけることなので、どのスポーツ選手にとっても必要だと考えています。

 以前は選手の育成・パフォーマンスの向上・怪我の予防とは別々に行われるものと考えていましたが、正しい身体の使い方・身体のケアをすることで選手の成長も促進し、パフォーマンスも向上する、さらに怪我も少なくなる。今はトレーナーという立場からでも育成に大きく貢献できると考えています。


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ジュニア期の選手のトレーニングなどで気をつけていることなどはありますか? ---------------------------------

 どれだけわかりやすく伝えられるかが重要だと考えています。それは言葉遣いや動作はもちろん身だしなみや雰囲気も含めた接し方なども注意しています。

 また、選手に合ったトレーニングをするために、自分の引出しを多くしなければと思っています。




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今日の内容の狙いなどあれば教えて頂けますか? ---------------------------------

 まずテーマに関しては、誰もが絶対に興味がある事をものだと思っています。

 選手が成長段階のどこにあるのか、また今後成長していくなかでどういった事に気を付けなければいけないかを少しでも伝えられたならいいですね。


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最後になりますが、本日の感想をお聞かせ願えますか? ---------------------------------

 子供たちの熱気がすごいですね!他のセッションも含めこれだけの人が集まる事はなかなかないと思います。また、日本のトップで活動されてるコーチ陣がこれだけ参加していることも他ではありませんよね。私自身、他のコーチのセッションにとても興味がありますし非常に楽しみです。

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