今倉定男氏による「ナチュラル&パーフェクトシュート」
今まで打ち込んできたシュートフォームとは少し違ったフォームでシュートする子供たち、セッション開始前には届かなかったシュートがみるみる届くようになり、女子でもワンハンドで3Pを決め始める。半信半疑の表情で練習を始めた子供たちがシュートを決めてニコッと微笑む。ほんの2時間の中で起こった出来事である。何がたった2時間で子供たちをそこまで変えたのか、今倉ワールドの一端をこのレポートに記す。
今回、2つのセッションを担当して下さった今倉定男先生は公立校の教員でありながら、毎年バスケットの勉強のためにアメリカに行くほどの情熱と行動力の持ち主、そこで作り上げた人脈や知恵、知識をご自身で整理しながら指導に還元している。
シュートというバスケットにおいて最も重要な技術を今倉先生がどう指導されるのか、セッションには子供たちだけでなく多くの指導者の方々が見学に訪れた。独特のユーモアを交えながら話す今倉ワールドに、沢山の人間が引き込まれる。そして確固たる信念と確かな理論に裏付けされた先生の言葉に釘付けになる。
セッションの中で今倉先生が強く何度も言っていた言葉がある。
「ナチュラル」
「自然な体の動きを邪魔しないことが重要」
と語る先生。良いシューターは自分の自然な動きに逆らわないという。そして、自然な動きで正しい身体の使い方ができているシューターには共通の動きが現れるという。
■ スウィープ&スウェー
シュートはストレートアップ・ストレートダウンと言われているが、今倉先生はそれは古い考えだと言う。最近の選手ではステフィン・カリー、昨シーズンで引退したコービー・ブライアント、古くはマイケル・ジョーダンやスコッティ・ピッペンのような素晴らしいシュート力を持つ選手はストーレートアップ・ストレートダウンをしていない事が多い。シュートを打った後には脚が少し前に出ており、上体は少し後ろに傾いている。右利きならば右足が、左利きならば左足が少し前に出て体勢が斜めになる。これは悪い事では無く自然な事だと言う。
■ 大胸筋とお尻!!
突然だが、皆さんはどこの筋肉でシュートを打つだろうか。従来の指導のシュートフォームだと広背筋や上腕三頭筋が強く使われるという(上腕三頭筋が強く使われているのはあまり良くない:今倉先生談)。
しかし、ナチュラルなシュートフォームを身につけると上記の筋肉よりも大胸筋が使われるという。大胸筋を使い、腕が押す動作をしながらボールを飛ばす。押す動作では大胸筋の方がより強い力を発揮できるからだ。ご自分でもウェイトトレーニングをされる今倉先生、上半身の筋肉でバーベルを上げる場合、ベンチプレスが一番重い物をあげられるという。
また、お尻でお腹を押すように力を入れられるとより力を発揮でき、飛距離が伸びるという。
実際に簡単なトレーニング(ヒップスラストなど)を交えながら子供たちに力を入れる感覚を掴ませると、飛距離が確かに伸びてくる。身体の使い方、力の使い方でこうも簡単に変わるのか。
■ ヒッチはNG!!
ラリー・バードという選手をご存知だろうか。彼は1980年代にNBAで大活躍し1992年のドリームチームにも選ばれた名シューターである。
彼のシュートフォームは肘がしっかり曲がりボールが頭の脇あたりにある。そこから肘より先を振るようにしてシュートを打つのだが、このようなフォームをヒッチと呼ぶ。
ヒッチで入ったシューターは彼だけだと説明する今倉先生。
上に記載した上腕三頭筋が強く使われるシュートフォームがこのヒッチにあたるのだが、上腕三頭筋は大胸筋や広背筋に比べると力が弱く、それ故に飛距離を出そうとするとコントロールが難しくなるという。そしてヒッチで無理に飛距離を出そうとするフォームはナチュラルからは離れてしまう。よってヒッチはいけないのである。
前述した内容などにも共通するがセッションを通して先生が大切にされていたことがある。
「感覚を掴むこと」だ。これは箇条書きにして紹介するが
・指先(タッチ)の感覚(パッドを転がってティップで放つ、ボールをキャッチした時に手の平はべたっとつけてシューティングフィンガーの指先はボールから離す、シュートのアーチはタッチで上げる)
・力を入れる感覚(前述した大胸筋、お尻、お腹への力の入れ方)
・ボールを押す感覚(腕を折りたたみ蛇腹のようにする、そして蛇腹が伸びる動きでボールに力を伝える)
あっという間に二時間が経過した。セッション開始前とは少し違ったシュートフォームでシュートを打つ子供たち、遠い距離からも簡単に打って決めていく。中にはスリーポイントから更に1m近く離れた距離から決める子もいた。小学生も3P近辺の距離をワンハンドで決めていく。二時間前には届いていなかったような子達が、である。
見学していた指導者の方々も驚きながら今倉先生への質問が止まない。そこにいた全員が今倉ワールドに引き込まれていた。
筆者自身、現場に居合わせながらこんなに変化があるのかと驚きを隠せなかった。
合計4時間、その日一番長く一番近くにいた私が誰よりも今倉ワールドに魅了されていたであろう。この日受けた衝撃をしっかりと消化し、これからの指導に活かしていきたい。
今後、今倉先生からどのような情報が発信されるのか、どのような子が育てられるのか期待せずにはいられない。
最後になるが、練習内容とセッション終了後に今倉先生にインタビューさせていただいた内容を紹介する。先生の哲学に少しでも触れて頂けることを願う。
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今回のセッションの感想を教えて下さい。
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二時間は短い!!笑
もっとできることはあったが、二時間で出来ることを精一杯行えたし、伝えられたと思っている。子供たちにも変化があったし、見学の指導者にも多くの事を伝えられた。
一番良かったことは子供たちに笑顔がでたこと。練習の満足感で笑顔が出るのが一番、それがあった。
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今回の指導のねらい、目的はなんでしょうか?
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子供たちにはテーマにもあるようにナチュラル、自然な体の使い方を身につけて欲しかった。自然な動きを邪魔しないフォームを身につければもっとシュートが入るようになる。
指導者にはちょっとした投げかけを、こんな指導・考え方があるんだということを伝えたかった。これをきっかけに様々な議論が生まれてくれれば嬉しい。
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シュート指導において先生が大切にしているポイントを教えて下さい。
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その子のボディタイプを見極める事。キャッチした時にボールを持つ位置、構え、フォームには個人差がある。その子がどう身体を使うのが自然か見てあげる事が大切。
また、上手くいっていることに気付かない子もいるのでそれを教えることも重要。
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ジュニア期の選手を指導する際にどんなことを意識されていますか?
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間違った方向に導かない事、型にはめるわけではなく正しいスキルを伝えたい。
大人も子供もやることはバスケット、その本質をしっかり教えることが重要。
様々な考え方や指導があるが、何が良いのか答えはプレーヤーが出してくれると思っている。
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サミット全体の感想をお願いします。
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素晴らしい文化だと思う。アメリカでもAAU(amateur athletic unionの略称)で似たようなイベントがある。こういった文化はどんどん発展させてほしい。その為には雰囲気作りなどが重要だと思う。見学の際に複合施設故にバスケットだけの雰囲気作りが難しいように感じた。
そのへんはエルトラックさんの腕の見せ所!!笑
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最後になりますが、先生の指導理念を教えて下さい。
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魂を伝えたい、半端じゃなく情熱が大切。エンスージアズムだよ!!
〈練習内容〉
① エアシュート(マジックタッチ確認)
その場でシュートを打つ、腕は斜め前に出るがボールは真上に打ちあげる。
腕がボールを追い越せたらGOOD!
② ノーチャージセミサークル内からのシューティング(マジックタッチ確認)
ノーチャージセミサークル内からシュート
腕は斜め前だがタッチが良いとシュートは上にあがり良いアーチでリングに入る
③ ぴょんぴょんシュート
長方形の外あたりからボールを持ってシュートの構えで何回かジャンプしシュートする。
タッチの確認とまっすぐ飛ばすことを意識(シューティングラインを作る)
④ 二人組キャッチ&ショット(ディップ&ショット)
二人組でパスキャッチからシュート
キャッチしたボールを腿に当てるように下げて(ディップ)からショットする。
⑤ ワンドリブル・ケンパーシュート
ドリブルからケンパーステップでシュート(1歩目が片足、ホップして2歩目を両足着地)
利き手側の足が少し前にでてリングに対して斜に構える様に着地する。
⑥ キキムーブ(キックバック)
⑦ ターンアラウンド(コービームーブ)
実践的な動きの中でスウィープ&スウェーが出るとGOOD